仕事をしながらライトノベルを書いていたら死にかけた話 -天使と悪魔のまどかシフト-
みなさん、こんにちは。
カキカエブログ管理人の加々美です。
寒い日が続きますが、なかなか朝起きるの大変ですよね?
今日はそんな朝起きる事について、命を賭けていた頃の話です。
そもそも人にはそれぞれ適したリズムというのがあり、このリズムが崩れると人は力を発揮できなくなる。
それは多忙であっても、趣味であっても変わらない。
自分の場合は、趣味と仕事を両立させるためにやっていたのですが、なかなかボロボロになってしまい、5年近く経っても後遺症が多少残っている。
そもそも、なぜここまでリズムが崩れたかというと、それは電撃大賞に応募する為である。
そう、あの「有川 浩」、「川原 礫」、「川上 稔」を生み出したライトノベル新人賞の最高峰だ。
社畜キャラのような書き方をずっとしてきましたが、命を削って時間を作っていた時期もある。
- そもそも、ライトノベル新人賞の応募って何をするの?
- そもそも遅すぎたスタート
- そうだ、まどかシフトをしよう
- 早寝早起き生活「まどかシフト」のタイムスケジュールと陰り
- 作品完成!そして残る後遺症
- 夢を追うなら、逃げたくなるような努力の仕方はするな
そもそも、ライトノベル新人賞の応募って何をするの?
面白ければ、何でもアリ!が売りの電撃文庫だが、さすがに規定というものはある。
今サイトで見た感じだとこんな文量だ。
電撃大賞応募要項
・ワープロ原稿80枚から130枚
・1ページ=42文字 x 34行
・未発表の日本語で書かれた作品に限る
・締め切りは4月10日(消印有効)
自分が応募した頃と変わっていない。
ちなみにライトノベルと言われる作品は、そのライトさと、高尚ぶりたい他の取り柄のない読書家により軽く見られる傾向がある。
その結果、「俺でも書けるわ」、「ワンパターン」、「可愛い女の子出しとけば何とかなるでしょ」などと言われるが、断言して良い。
なぜなら、長年の研究と自分の経験からこうした内容を知った為である。
・好きな事でも文庫本で300ページ分、約100,000字を読者(審査員)の目線を気にして書くのは一筋縄では行かない。
・応募総数 4,580通の中でナンバーワンの王道になるのは至難の業。
ワンパターンな話だと、2,000も3,000も被ってしまい、その中での比較合戦に勝つ必要がある。
更にデビューしても、それはそれで「川原 礫」、「鎌池 和馬」と勝負しなければならず、相手は死ぬ。
・可愛い女の子は恐らく4,580作品中、4,500作品に出てくる。
全員参加型の戦場。
そう、もう20年近く、ライトノベルの新人賞なんてのは、週刊少年ジャンプの投稿と同じぐらい激戦なのだ!
ココに応募するために、毎日5時間ぐらいぶっ通しで書いていた。
そもそも遅すぎたスタート
まずは一回ちゃんとラノベを書いてみたいな~と思って数年。
色々なハウツー本や、ラノベに限らず映画や小説の知見、悪魔や魔術・民族衣装などを揃えていたが中々書けなかった。
そもそも一人で設定書書いて、そして自らコツコツと文章を打ち込むなんて、完全な自己満足ではないかという疑問に取り憑かれて手が止まることがしばしばあった。
そもそも子供時代はゲームとカードゲームばかりだったので、凄く恥ずかしい事をしているような気がしてならなかった。
そうした中出会ったのが、mixiオフ会の同士達であった。
うわぁ響きが懐かしい……
ここで、自分は一人でないこと、同じ悩みを持つ人がいる事、そして目の前の生きた人間達も応募している経験があるなら、自分も頑張れば出来るはずと応募を決意した。
ただ、問題はタイミングが遅かったという事で、オフ会はなんと2月20日であった。
覚えているだろうか、上に書いた電撃大賞の応募締め切りは4月10日。
あと約50日。
こりゃあもう、死ぬ気でやってみるしかないな!
そうだ、まどかシフトをしよう
2011年1月には「魔法少女まどか☆マギカ」が放映され、その後映画続編が作られるなど大きなブームとなった。
そして、作品を語る上ではずせない話題が、伝説の10話である。
これまで9話をかけて深まっていた謎を一気に解き明かして見せたのだ。
そして探偵小説で作者が読者に挑戦状を投げつけるかのように、このアニメは視聴者に強烈な投げかけを行った。
「さて、これにて二人のヒロインの秘密や魔法や敵の正体は全て明かされました。残りの2話で、どのような結論をつけるでしょうか。お考えください」、と。
これには参った。
2005年頃からアニメを再び見だした自分であったが、アニメを見ててここまで考えさせられる機会はなかったからだ。
(敢えて上げるなら、コードギアス2期最終話一つ前ぐらいか)
そして、皆がそれぞれ議論をし尽くしていた中、3月11日には東日本大震災が起きる。
勿論テレビはそれどころではなくなり、最終2話の放送はお蔵入り、そう思われた矢先であった、4月21日の27時に放映が決定した。
22日の3時と言った方が分かりやすいかもしれない。
奇しくもその日は会社の新入社員歓迎会。
しかも、自分は幹事だ。
さらに、日中には長時間の運転の予定もあり、深夜視聴=事故死、当日欠席=会社的な死を意味する。
ここで思いついたのが、早寝して、早起きをして見ようという発想であった。
まどかシフト、完成の瞬間である。
そして今回の電撃大賞の応募も、まどかシフトを組もうと、そう決意した。
早寝早起き生活「まどかシフト」のタイムスケジュールと陰り
早速オフ会の翌々日から、5時に起きる生活が始まった。
そして、朝の準備を終えて、6時には設定を練ったり執筆を始めていた。
そして会社の近くの喫茶店に移り、8時前にはそのカフェで執筆を続けた。
9時5分前などに出社して、愛想を捨ててとにかく素早く仕事を終わらせる事だけに集中した。
そして8時頃には逃げ出すように会社を出て、そしてファーストフードを片手にワープロを叩き続け、そして家に付いてからはそのまま風呂に入って、蒸気アイマスクを5分だけして、すぐに寝るという猛烈な生活をしていた。
さらに休日は、ミスタードーナッツでドーナッツを貪りながら、延々とカフェオレをお代わりしながら執筆し、集中力が切れると、今度は休憩と称してファミレスでご飯とドリンクバーを頼んで執筆をし、そこで2食を食べたりしていた。
平日でも4時間、休日は10時間ぐらい書いていたと思う、
間違いなく、色々と渾名をつけられていたと思う。
はじめは書けば書くほど経験が身についてスピードも上がっていった。
日に書ける分量が1000字から、2000字へと延び、6000字近くまで書いた日もあったような気がする。
(ちなみにこの記事は4000字!/1.5h)
だが、3月15日頃、6万字を過ぎたあたりからどうもペースが落ちだした。
社内ではプリンターを人が使っていると舌打ちをするようになり、電話応対も超絶早口となった。
俺の貴重な時間を消費するんじゃない、死ねと言わんばかりの早口である。
さらに、役員の「早いな」というイヤミに対して、「ありがとうございます」と顔を見ずに返事して早足で帰るぐらいの、悪い意味でキレてる社員であった。
今思えば、カフェインの影響も大きい。
喫茶店の紅茶ではコップ3杯分のティーポットで出てくるし、仕事中も眠気に対抗するためずっとレッドブルやコーヒーを飲み続け、ブラックブラックのガムを噛んでいた。
完全にカフェインの薬中みたいな生活をしていたのだ。
こうした生活習慣こと「まどかシフト」は生きている事が辛いレベルまで病んでいった。
仕事が長引いた場合は、7時間確保していた睡眠が取れず、睡眠不足に陥ることも少なくなかった。
また会社の飲み会を勝手に入れられたときは、さすがに参った。
こういうの君が企画しないと、といった例の嘘つき人事は張り倒してやろうかと思った。
まさに一人過労状態であった。
作品完成!そして残る後遺症
こうしたギリギリの線を走り続けた努力により、3月末に私の渾身の処女作「デウス・エクス・チドリ」が完成したのである。
原稿を印刷して、自分で書いた「引き返し不能地点」にポイント・オブ・ノーリターンとフリガナを手書きで降った所が一番高揚感があった。
多少の直しの時間をとれたとは言え、本当に稚拙な作品ではあった。
だが、何度も挫折していた「一つの作品を完成させる」という事が出来たのは素直に嬉しかった。
4月10日の昼、消印有効のその作品を出して、私のまどかシフトは終了した。
しかし、睡眠時間を戻しても解消すると思っていたこうした内容は完全には解消しなかった。
・時間感覚の喪失
つまり今が朝なのか、夜なのか感覚で分からなくなったのである。
・カフェインが切れた時の頭痛
・ラノベの定番、3点リーダー(…)は必ず2回連続表記しないと校閲で跳ねられるという恐怖……
またワープロに向かう事がしばらく辛く、2作目は結局完成していない。
少なくても転職するまでは無理だという気持ちがあった。
確かに時間はかかったが、一つの転職を決めた大きなきっかけでは合った。
転職してからは長期作戦でコツコツと書いていたが、自分で考えた設定に矛盾があった事に気づいてしまって「一時凍結」と言うの名の永久封印となってしまっている。
だが、いつか必ず応募を続け、何かしらエンターテイメントを自分で作ってみたいと思う。
夢を追うなら、逃げたくなるような努力の仕方はするな
今でもあのペースで作品を応募した事は本当に正しかったのか自分で疑問に思う。
あの勢いがなければ、自分にとっての処女作という最も難産であるはずの作品は永遠と生まれなかったのではないかと。
また、色々と当時を思い出してこの記事を書いていたら、あのときに考えていたメインヒロインの千鳥ちゃんが、また別の形で自分の作品に参加したがっているような不思議な気持ちが沸いてきた。
恐らく、2月にも満たない私の挑戦の中で生まれた、小さな、そして個人的な「愛着」なのでは無いかと思う。
今でも、自分にとって文章を打ち続ける事は救いであるような気がしてならず、懲りずに今度はブログという形で世間に文章を公開している。
この時の応募では、下読みと言われるバイトの審査員しか読まないフェーズで落選した事が判明したので、すごく醒めてしまったのかもしれない。
はてなブックマークのおかげもあって、慶應の記事がgoogleでも検索ワードによっては悪くない位置まで来ている事もあり、2日で約2000人も来てくれた。
世のブロガー逹にとっては大した数字ではないと思う。
ただ、ある程度の人数に記事を読んで貰えた思うと、すごく嬉しい。
人生は躊躇っていられるほど短くはないが、息継ぎが出来ないほどのペースで走り抜くにはあまりにも長い。
ましてやエンターテインメントを作りたいならば、自分も楽しんで作らなければならない。
そんな事を学んだ気がした。
何事もペーシングに気をつけて、頑張っていきましょう。